翌日、児童相談所は心愛ちゃんを保護しました。
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ここまでは社会が子どもを守るために動いたと言えます。しかしわずか20日でこの子は家に戻され、教育委員会指導課長は押しかけて怒鳴り散らした父親に心愛ちゃんの書いたアンケート回答を渡したというのです。一年後、心愛ちゃんは亡くなりました。
アンケートを父親に渡すなんて、おかしい。虐待は加速するものですが、火に油を注ぐ行為だと思う。
野田市 個人情報保護条例 第17条には、請求があっても個人情報を開示しなくてよいとされるケースが列挙してあり、その最後の項がこれです。
(5) 未成年者の代理人により本人開示請求が行われた場合であって、開示することが 当該未成年者の利益に反すると認めるとき。
情報公開条例を守り、手続きを踏めば、時間も確保できます。その間に児童相談所としっかり話し合うこともできたはず。「開示するべきではない」「親の様子から見て再び子どもを保護すべきではないか」という判断ができたと思うのです。
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ではなぜ指導課長はアンケートを渡してしまったのでしょうか。
暴力のスイッチが入ってしまっている人間が目の前で威圧してくる。本当に恐ろしかったことと思います。どうすれば屈服しないで立ち向かえたか?
私はそこが大切なところではないかと思う。
私たちは教育関係者に「子どもたちだけは命に代えても守る!」みたいな幻想を抱きがちではないでしょうか。しかし彼らは決してスーパーヒーローではない。普通の人間です。仕事は忙しいため外の世界を知らない傾向は強まっています。事務処理に追われ、パソコンを覗きっぱなしの教員も多い。問題を全職員で共有しよう!なんてのは理想に過ぎず、限られた教員でいじめの対応などは進められる。ではその限られた人たちがスペシャリストかと言うと、そういうわけでもないのです。
とくに虐待・いじめという増加する問題についての専門性は低い場合が多い。自分が出会ったことのある事例で判断してしまいがちです。教育委員会も同じです。
当事者の生の声が聴ける勉強会などに参加する教員はごく少数です。部活で時間がなかったり、土日は疲れ果てていたり。
そういう現状を認めたうえで、「一人では立ち向かえない」という現実を私たちは受け入れなくてはならないと思います。外からの人も加わり、チームを作って問題と向き合う。それが私の提案です。
そうしなくては、子ども達を救うことはできないのではないでしょうか。