一度だけ議会でのどが詰まり、うまく声が出なくなったことがあります。
それは2016年の3月議会の一般質問。
前年の8月25日(二学期が始まる2日前)に市内の橋から転落して亡くなった中学生について取り上げようとした、その冒頭でした。
簡単に人は死ぬものではないのです。
その子がどんなに悲しみ、苦しんだか。
そして、大切な子どもを亡くされたご家族がどんなにもがき苦しんだか。
足元から世界が崩れていくような思いを、繰り返し味わい続けておられるか。
そうしたことが一瞬に私の中にわきあがったのでした。
学 校 の 対 応
学校長、教員の皆さんは子どもが亡くなったとたんに、それまでとはまるで違ってしまうのだと思います。のちに情報公開で分かったことですが、その夜、小学校・中学校で先生たちは過去のいじめアンケートをすべて点検するよう指示されていました。
いじめの記録が見つからなかったことはすぐに校長に伝えられたようです。
警察署で呆然とするご家族にお会いした校長は「うちの学校にいじめはなかったのです」と告げて、ご家族の強い反発にあいました。家族はいじめがあったことを知っていたからです。
もうすでにこの時点で、いじめがあったのか、なかったのか、が焦点になっていたと思います。
学校側の気持ちはそこに集中していたのだろうと思います。
なぜ先生たちは 調査をしようと しなかったか
青梅市に限らず、子どもが自死した時、先生たちも教育委員会も調査には消極的です。
私自身、市教委から「私たちは捜査機関ではない」と言われたことがあります。
しかし子どもの命が失われた、あるいは学校にいけなくなった、という時、いったい何があったのか、明らかにする努力をしなければ、また同じことが繰り返されるのではないでしょうか。
事実に向き合うのはたいへんなことですが、それでも私はきちんと調査をしてほしいと思います。
専門家の指摘によれば、
1、損害賠償を請求されたくない
2、同僚の教師に責任をかぶせたくない
こういう心理が働いて、先生たちは調査に及び腰になるということでした。だから先生たちに責任を負わせないことを前提にしなくては、真実はあきらかになっていかないのだそうです。
考えてしまいますね・・・
携帯電話や パソコンのSNSを消せ、 という学校からの指示
「犯人は○○」などの心ないSNSが飛び交ったのを理由に学校は生徒たちにSNSを消すこと、噂話はしないように、などの指示を出しました。
これは生徒たちには相当なインパクトがあったようです。2年後に第三者調査部会による聞き取り調査が行われましたが、この時の指示が心に引っ掛かり、話をするのを拒否する生徒もいたそうです。
生徒たちが仲間の死について、ていねいに話し合う機会を作るべきであったと思いますが、それも無く、宙ぶらりんの思いを抱いたままであったのだろうと想像します。
SNSを消すように、という指示は生徒たちを完全に子ども扱いしたものだと思う。一種の人権侵害ではないか、と私は思うのです。
「憶測で誰かを犯人にするようなSNSは、人を傷つける。それを理解してほしい。そういうことを流すとはどういうことか、一緒にここで考えてほしい」
そんなふうに生徒たちに訴えることはできなかったのでしょうか。考える機会、話し合う機会を学校は奪ってきてしまったのではないでしょうか。
いじめは 個人の問題ではない
新聞などを読むと、多くの町で校長や教育委員会が、「生徒が自殺したのは家族に問題があったから」とか、「自分のやりたいことができなくなり、行き詰ったから」「誰かを好きになってうまくいかなかったから」そんなふうに勝手に想像しているのです。
共通しているのは、自分たち以外のところに原因があるというように解釈する傾向です。
青梅市でも私は市教委から、そういう風に誘導するような発言を聞きました。
自殺やいじめの問題を個人の問題にすり替えて、学校は何もかかわりはない、というようにしたいのだな、と感じました。
私は大きな声で言いたい。
子どもはそんなに簡単に死なないのです。
いじめや自殺を個人の問題で片づけてはいけない。
これは私たちの社会の問題なのです。
ようやく 第三者部会による調査が
ご家族はしっかりした調査を求めていろいろ働きかけをしました。
しかし教育委員会も学校も第三者による調査をしません。
重大事態ではない、というのです。
お父さんは市長に手紙も書いておられます。
しかし浜中市長は会おうとしませんでした。
私もまた、議会で一般質問としてこの問題を取り上げたのですが、その時の議会の反応はたいへんに冷たいものでした。「こういうことは一般質問で取り上げるべきじゃない」という声も聞こえました。私は当時の山本議長に呼ばれ、どうしてこういう質問をしたのか、内容はどうなのか、あれこれと聞かれました。ご家族と徹底的に話し合い、考え抜いた末、議会で取り上げたのですから、非難されるような点は全くないと答えました。
議員も生徒の死は個人の問題と考えていたのでしょう。
ついにご家族は弁護士を代理人として、青梅市に第三者委員会による調査をすることを求めました。市はこの求めには答えなくてはならないと決められています。
ようやく、専門家を入れた第三者調査が行われ、約1年後、いじめがあったことが認定されたのです。
この報告書は青梅市教育委員会のホームページで全文ご覧になれます。↓
(市教委は全文を公表することを避けて、概要版を公表しようとしましたが、ご家族の反対で、やっと全文が公表されました。8ヵ月も後でした)